フリーランス美容師に必要な手続きとは? 開業届の書き方を紹介します!

2022.07.06

はじめに

美容室を開業する場合には美容所開設届、フリーランスの訪問理美容師として働く場合には出張理容届・出張美容届を保健所に提出することが必要です。
いずれの場合も事業所得が生じることになるため、税務署に開業届を提出します。
また、確定申告は、特別控除や繰り越し控除などの特典があるため、白色申告よりは青色申告がおすすめです。

美容師として独立する方法には店舗を持っての美容室開業のほか、店舗を持たずにフリーランス美容師として活躍する方法もあります。
美容室を開業する場合、フリーランス美容師として仕事をしていきたい場合の手続きについて確認していきましょう。

 

 

美容室開業までの流れと必要な届け出

美容室を開業するには、美容室を設ける場所を管轄する保健所へ届け出が必要です。
美容所開設届に必要事項を記入し、必要書類を添付して届け出をするだけでなく、保健所の職員が実際に開業予定の美容室を検査し、確認を受けなければなりません。

そのため、オープン予定の10日前、遅くとも1週間前には届け出をするよう求められています。
検査を受けるには、美容室開設にあたって求められる設備などがすでに整備されていることが必要です。
そのため、開業準備をしていく中で、どのタイミングで美容室開設届を出すのか、事前にしっかり計画しておかないとスムーズなオープンに漕ぎつけられません。

○月○日オープンとチラシを配った場合やお店の前にポスターを貼っておきながら、
検査が間に合わずオープンが延期にならないよう気を付けましょう!

美容室開業までの流れ

 

美容室を開業するには、いきなり保健所に美容所開設届を出しても通りません。
届け出が認められるには、美容室として認められる店内の装備や設備を満たすことが必要です。
その条件を確認するためにも地域の役所のホームページなどを確認し、美容室開業に求められる条件を確認しましょう。

開業条件の確認

主な条件は以下の通りです。
まず、常に清潔な状態に保てる装備を備えなくてはなりません。
そのために、床や腰板にコンクリート、タイルなど不浸透性材料を使用することが求められます。
洗場は流水装置とし、蓋つきの汚物箱と毛髪箱を備えなくてはなりません。

次に、消毒設備の設置が必要です。
エタノールや次亜塩素酸ナトリウム、逆性石けん、紫外線消毒器などを供えましょう。

また、採光や照明、換気をしっかり行える設備を整えましょう。
採光や照明が重要なのは、お客様に心地良い雰囲気づくりをする目的ではありません。
お客様の安全を確保し、適切なサービスを提供できるよう、美容師が作業を行いやすい100ルクス以上の照度が確保できる設備を用意することが必要です。

美容室内の空気1リットル中の炭酸ガス量を5㎤以下に保てる換気構造にしなくてはなりません。
さらに、そのほか知事が定める衛生上必要な措置を講じることが必要です。
これは都道府県ごとに異なりますので、特別な条件がないか、開業に向けて美容室の物件を用意することや内装のデザインなどを検討する前に確認を行いましょう。

開業までの流れ

・地域のマーケティングなどを実施、店舗を持ちたいエリアの目安を立てます。
・どのくらいの規模の美容室にするのかも検討が必要です。
・セット面の数やシャンプー台の数、待合室の広さなどを検討し、どのくらいの坪数が必要か、どのような形の物件が良いか考えましょう。
・希望が固まってきたところで、希望のエリアで予算に合うテナント物件を探します。
・開業にあたって融資を受けたい場合には、創業計画書の作成を行い、融資の審査に申し込みましょう。
・金融機関などとの面接を経て融資が決定したら、探し当てたテナント物件と正式に賃貸契約を締結します。
・内装工事を依頼する業者を決めるために相談をすることや見積もりを取ります。
・保健所に開設届を出す前に、事前打ち合わせを行うのがおすすめです。

保健所では開業を予定する美容室に対し、工事の着手前に事前打ち合わせをするよう推奨しています。
実際に工事が終わってしまうと、条件を満たしていないなど不具合があっても、容易には改善ができず、余計な費用や期間が必要になるおそれがあるからです。
事前打ち合わせには、工事を請け負う業者にも同席してもらい、三者で共通認識を持っておくのが安心です。

・打ち合わせで、内装業者から提案された設計図などで問題ないと確認できたら、内装工事を実施してもらいます。
・内装工事が完了したら、衛生機材や美容機器など必要なアイテムを装備しなくてはなりません。保健所の検査で備え付けられているかチェックされるアイテムが、すべて網羅できるよう漏れなく取り揃えます。
・必要書類を取り揃え、美容所開設届を保健所に提出しましょう。
・事前に日時を取り決め、その日に保健所の職員が店舗を訪問し、立ち入り検査が実施されます。
・問題なく検査をクリアできたら、店舗運営に必要な準備を整えていきましょう。

消耗品を揃え、装飾を施すことやチラシの配布やホームページなどでの告知、実際に一連の作業を行うなどオープンに向けて準備します。
・オープン日にめでたく開業となります。

美容室の開業に必要な「開業届」と手続き

美容室を開業するために必要な開業届として、保健所に開業前に提出して検査を受ける美容所開設届と、開業後に税務署に提出する開業届、必要に応じて提出する青色申告承認申請書があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

美容所開設届

美容所開設届を提出するだけでは、開業が認められないので注意しましょう。
届け出後に保健所による検査・確認を受け、保健所による確認済み証の交付を受けることが必要です。

開業にあたっては、確認済み証を美容室内の見やすい場所に掲示することが求められます。
確認済みの証の交付までに一定の期間を要するため、オープンまでに余裕を持って届け出を行いましょう。
検査で不備を出すなどしてオープンが遅れないよう、美容室の開業を計画した時点で、保健所に施設図面などを持参して、施設基準に合致するか事前相談をするのがおすすめです。

そのうえで、内装工事に着手し、工事完了時期の目途が立ったら、美容所開設届を提出するタイミングです。
美容所開設届出には、従事する美容師全員の美容師免許証の原本をはじめ、診断日より1ヶ月以内の結核・感染性皮膚疾患の有無に関する診断書の原本の添付が必要になります。

従業する美容師が常時2名以上になる場合には、そのうち1名が管理美容師であることを証明する書類の提出も必要です。
美容師免許証の原本は、届け出時に確認をしたうえで返却されます。
美容所開設届出には美容所の平面図、付近見取図を記載するか、建築図面、住宅地図などの添付が必要です。

税務署への開業届

新たに事業所得を生ずべき事業の開始する際は、事業の開始日から1月以内に税務署に開業届を提出する必要があります。
また、青色申告を希望する方は開業届に加えて、青色申告承認申請書も提出しましょう。

フリーランス美容師はどちらが得する? 青色申告・白色申告

青色申告は複式簿記で記帳を行うことで、税務会計をしっかり行い、正確な税務申告ができているとして税制上の特典が与えられる制度です。
これに対して、白色申告は青色申告を選ばない方式を指します。

白色申告が確定申告の原則形態であり、青色申告をする場合には事前に申請をして管轄の税務署長から承認を受けないといけません。
原則として青色申告の対象となる年の3月半ばまでに提出することが求められますが、その年の1月16日以後に事業を開始した場合は事業開始から2ヶ月以内に提出すれば青色申告が認められます。

青色申告のメリット・デメリット

 

青色申告を行い、複式簿記などの正規の簿記で記帳し、それにもとづいて作成した貸借対照表と損益計算書を添付して法定申告期限内に確定申告をすると55万円の所得控除が受けられます。

仮に税率20%の方なら11,000円の税金の節約が可能です。
たったそれだけと思われるかもしれませんが、実際に自分で事業を経営するようになり、確定申告をするようになると55万円分の必要経費を計上することがいかに大変かがわかるはずです。

さらに、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行えば、特別控除額が65万円と10万円の上乗せできます。
一方、複式簿記で記帳しても貸借対照表と損益計算書の作成をせず、提出しないと特別控除額は10万円に限定されるので注意しましょう。
それでも、白色申告では特別控除はないため、10万円でも税負担の軽減に役立ちます。
黒字になっている場合は特別控除で税負担の軽減が受けられますが、開業当初をはじめ、なんらかの事情で赤字となってしまった場合も、青色申告をしているとメリットがあります。

青色申告では、赤字額についえ翌年以降3年間繰り越し控除が認められるのです。
もし、初年度が赤字で2年目は黒字になった場合、赤字額を翌年の所得金額から控除でき、その分2年目の税負担を抑えることが可能です。
逆に前年度は黒字だったのに、翌年は入院するなどして仕事ができず赤字になった場合には、その年の赤字を前年度の黒字に繰り戻して控除し、すでに納付した前年度分の税金の還付を受けることもできます。

美容室を開業している場合の光熱費は必要経費に計上しますが、フリーランスの美容師が自宅でインターネットや電話で営業活動をしたり、事務処理をしたり、美容道具のメンテナンスなどの仕事をする場合、家事関連費として計上が可能です。
たとえば、自宅で毎日3時間ほど事務作業を行う場合、光熱費や通信費の8分の1程度を事業に要した必要経費として計上できます。
このように、青色申告には節税に役立つさまざまなメリットがあります。

一方、複式簿記で記帳をする必要があり、記帳に時間を費やすといった点は忙しい美容師にとってデメリットと言えるかもしれません。
複式簿記の知識がない方は、会計ソフトやクラウド会計を導入したり、税理士に依頼したりとコストが発生する点もデメリットの一つです。

白色申告のメリット・デメリット

白色申告は複式簿記の知識がなくても、表計算ソフトなどを用いて収入と支出を管理しておけば確定申告ができるのはメリットです。
ですが、特別な特典は何もないのがデメリットになります。
家事関連費の計上も、事業の用途に50%以上使っていないと認められません。

【結論】フリーランス美容師は青色申告がおすすめ!

フリーランスの美容師の場合、美容室経営と異なり、必要経費が交通費や消耗品費のみで、家賃や光熱費などの必要経費がないため、稼げば稼ぐほど税負担が大きくなりがちです。
青色申告を選べば、特別控除が認められ、自宅で事務作業などをすれば家事関連費を必要経費にすることもできます。
その分節税につながるので、青色申告がおすすめです。

<h2>フリーランスの美容師には「訪問理美容師」という働き方もある!

フリーランスの美容師の場合、仕事の内容としては、メイクアップアーティストとしてタレントや出版社、テレビ制作会社、CM会社などから仕事を得る方やホテルや結婚式場、葬祭場などに出張ヘアメイクや着付けなどの仕事を行う方が多いです。
専属のメイクアップアーティストとして安定的に仕事が入れば良いですが、土日などイベントがないと仕事がないのでは困ります。
そんな方におすすめなのが、訪問理美容師という働き方です。

訪問理美容師って何?

訪問理美容師は高齢や障害、介護、入院などの事情で理美容室に来店することができない方のために、理容師や美容師が自宅や施設を訪問して、カットやカラーリングその他の理美容サービスを提供するものです。

サロンとは違いカット時間が短く一回で高単価を稼げる

訪問理美容師として働くメリットとして、1回の施術時間が短く、回転率も高めなことです。
寝たきりの方や病気療養中の方も多く、清潔に保つためのカットニーズが多く、サロンのようにトリートメントやパーマなど時間をかけた施術はあまり依頼されません。
自宅訪問の依頼より、老人ホームや福祉施設、病棟などからの依頼が多く、一度に複数人の対応をすることも少なくありません。
1度の訪問で何人も担当でき、高単価が稼げるのもメリットです。

おわりに

美容室は持たず、フリーランスの訪問理美容師として働く場合、美容所開設届ではなく、出張理容届・出張美容届を業務開始の前日までに主たる出張場所の所在地を管轄する保健所に提出することが必要です。
結婚式場などへの出張サービスとは、利用対象が異なるため、内容をよく理解し、高齢者や介護が必要な方への接し方を学ぶことも欠かせません。

開業に関するさまざまな手続きを請け負います!

フリーランスの訪問理美容師に興味があるけれど、何から始めれば良いかわからないという方は、日本エアクリッパー協会にご相談ください。
開業に関するさまざまな手続きを請け負うことも可能です。
保健所や税務署への届け出が済めば、訪問先のご紹介もできるので、安定的に仕事をしていくことができます。

訪問理美容に興味のある方はこちらから入会ください!

訪問理美容に興味がある方は、こちらからご入会いただくことで、訪問理美容に必要なノウハウなどをオンラインで学べます。
安心してお仕事に携わっていくためにも、ぜひご入会ください。
https://community.camp-fire.jp/projects/view/523155

 

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この記事を書いた人
有限会社ディ・アイ・シー

会社案内 昭和61年にヘアーサロンアダムを開業、1年後に出張理美容サービスを開始。7年後にはビューティーサロン「イヴ」を開店とともに、在宅向け出張理美容「アダム&イヴ」を開業。 現在、50施設以上に出張しており、月間約1700人、年間約2万人の調髪をおこなっています。